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説明しにくいことがら

先日、友人Aと話していたときのこと。私は知人Bの話をしたかったのだけれど、Bの特徴をAにうまく説明できない。

しかもBのその特徴が私にとって若干悩みの種にもなっており、ここを上手に伝えられるか否かに、会話の成功がかかっていた。

でもやっぱり私はBの持つ“ちょっと違う感”をうまく伝えることができず、優しいAは私を落ち着かせるため、「なっちゃんなら大丈夫だよ」というかなり強引なまとめをしてくれたのでありました。

そんな時、フト思い出したのが柚木麻子氏の「奥様はクレイジーフルーツ」という名著なのであります。

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帯の文章が気になるかとは思いますが、本書の真骨頂は人物描写の的確さ。特に好きだったのが以下の描写であります。


「そうか。ご主人にバレンタインのプレゼントか。幸せなんだな」

背中がかゆくなる気がして、初美は曖昧に笑う。そう、彼はこういう人だった。周囲より呼吸がワンテンポ遅く、皆でつくりあげた空気を、やたらと前向きな使い古された言葉で乱暴にまとめてしまい、場を冷ます。嫌われているということはないが、ノリが微妙にズレている。王子様ともてはやされても、浮いた話がほとんどなかった原因はそこにあるのかもしれない。


 

こんな風に、「イヤってほどでもないけどなんか違うゾ」っていう人や事象を適切に掬いだせる才能に目眩がしました。

憤死しそうになったり哀号したり快哉を叫んだりするような衝撃的な出来事は、自分の日々の生活にはほとんどありません。あるのは、「ちょっとめんど」とか「地味にイラッ」とか「ちょっと得した」とか、その程度なんですよね。でも、そのときどきのビミョウさを的確に言葉で伝えられたらいいなあと思うのであります。

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最近クサクサするようなことばかりだったからか、気づけばこんななってました。では!

小泉なつみって?

1983年生まれの編集者・ライター。TV制作会社を経て出版社に勤務。その後フリーランスとなり、書籍やフリーペーパー、映画パンフレット、広告、Web記事などの企画・編集・執筆をしています。ネタを問わず、小学生でも読める文章を心がけています。

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