
『アラジン』より『ドクター・ルース』でキマリ
『アラジン』、観ました。
ウィル・スミスがフレッシュ・プリンスしてて胸熱だった一方で、王女様のジャスミンにちょっともやもやしてしまいました…。
彼女は野心あふれる知的な女性として描かれており、誰よりも国民の幸せを考え、政治についても一生懸命勉強しています。
でも、女だから国王にはなれない。為政者にはなれないよ、とお父さん(国王)や周囲から言われ続けている。
極めつけは、国王の座を狙う国務大臣のジェファーに、「女はきれいにしときゃあそれでいいんだ。だからその口閉じておけ」とまで言われる。
そこでジャスミンの怒りの大熱唱がはじまります。「私はもう二度と黙らない、叫び続けるぞ」と歌い上げます(確か×2)。
また名曲「ホール・ニュー・ワールド」も、女性が切り拓く“新しい世界”として使われているように思えました。
すごくおもしろい映画なんですよ。アクションもすごいし。でも、なんかもやもやしてしまった。
たしかに女の人はこれまで辛い思いをしてきたと思う。
そこに異論はないんですけど、ディズニープリンセスがそれを何度も歌ったり訴えていることになんかちょっと引っかかってしまった。
そんな『アラジン』と対象的だったのが、『ドクター・ルース』です。
90歳の現役セックスセラピストのドキュメンタリーなんですが、彼女、140cmしかないんです。
それで髪の毛はたんぽぽの綿毛みたいにホワホワでまあるいから人形感があって、登場するやいなや、誰もが心を開くしかない感じなんです(テレビのインタビュー番組にゲストで登場するシーンではたいてい、足が床についていない)。
そんな見た目からしてファニーな彼女ですが、
17歳 ホロコーストで孤児になる
↓
20歳 パレスチナでスナイパーに。
砲弾を浴びて両足切断寸前に
※でも入院中にはイケメンの看護師にしっかりと色目を使う
↓
パリへ移住し心理学の勉強
その後も離婚によってカタコトの英語しか話せないにもかかわらず
移住先のアメリカでシングルマザーになり、結婚を3回し、42歳で博士課程修了、
おばあちゃん手前の年齢でラジオのセックス相談コーナーを持って大ブレイクと、
とんでもない人生が詳らかになっていきます。
そんな中で、
「バイブを使ったら男よりも良くなってきたどうしよう」
「中絶したことを後悔している」
「彼女がイカない」
などなど、「街のセックスよろず相談」といった感じでアメリカ国民の性の悩みにズバッと答えていきます。
「私が訴え続けてきたことは、周囲の人みんなに敬意を払えということ。“ノーマル”な人なんていない」
こう訴えるルースは、「“普通の”セックスなんてない」とも話し、性感帯が人それぞれ違うように、性的指向もみんな違うと語っていました。
そしてこの活動が、同性愛やHIV患者の差別撤廃、女性応援につながっていきます。
でも彼女自身はフェミニストを名乗ることはせず、政治的な発言も一切しない。
ただひたすら毎日、世界中でセックスの相談に乗り続けている。
彼女自身の仕事が女性の権利を拡大し、あらゆる差別からの解放運動になっていることに感動すると同時に、ジャスミンが声高に叫んだりしなくてもいい世界になることを願うのでありました。